ジンジャーエール

辛口エールで一杯ひっかける

オフィスで集中して作業するときに気をつけたいこと

今から10年くらい前の話です。

当時会社勤めだった僕。その日も朝からおもむろにPCを立ち上げちょっとした書類を作成しようとしました。

(さぁ、今日も1日頑張るぞ)

そう思ったかは今となっては定かではありませんが。

 

さて、話は変わりますが人は仕事において少しでもあるいは昨日よりも効率的な働き方ができないか日々頭を悩ませています。作業の効率化といえば、無駄な手順が無いか見直すとか定型化して考えないでホイホイできるようにするとか色々あると思いますが、なんといってもその基礎となるのは本人の集中力だと思います。まずはこれがないとどんなに素晴らしい方法であったとしても上手くいきません。

ただし、あまりに集中しすぎるのも考え物です。

 

書類作成を始めたぼくの隣の席では先輩がものすごい勢いでタイピングをしていました。ブラインドタッチ&ブラインドメロン&ブラインドタッチの勢いです。シャノン・フーンも鼻からコカインどころか鼻から牛乳でしょう。

1分間に4万字をワード上に溢れさせるその様はまさに鬼。仕事の鬼です。一心不乱にわき目も降らず朝の9時半にその日1日分の仕事のエネルギーをつぎ込むのかと錯覚しそうなほどでした。あまりの集中ぶりに声をかけるどころか咳払いさえうっかりできないピーンと張り詰めた空気が事務所を覆いました。

 

これはもしかしてゾーンに入っているのか。

先輩はほぼパソコンと一体化し無我の境地に到達している。おそらく先輩の中ではここはいつものオフィスではなくブッダガヤなのかもしれない。悟りの地。

 

カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ………ッタン!

 

隣の席からあの無機質なタイピングの音が途切れました。

(終わったのか…?)

 

しばらくの沈黙(おそらく先輩は入力内容を確認していたと思われます)

すると先輩は自分の仕事ぶりに満足したのか大きく「フーッ!」と吐息を漏らしました。

そして突然事務所中に響き渡る声でこう言ったのです。

 

 

「おかあさーーん!ごはんちょうだい!」

 

 

なぜ、家だと思った。

 

 

僕の予想ですがこんなイメージでしょうか。

おかあさん ⇨ 女性事務員さん

ごはんちょうだい ⇨ お茶入れて下さい

 

普段は「嫁さんなんかにガタガタ言わせちゃいけねぇんだよ。ビシッと教育しないとな」と亭主関白を吹聴していた先輩は社内にとんでもない甘えんぼさんぶりを露呈するに至り無事昇天の地サンカ―シャに辿り着き、お茶も飲まずに「行ってきます!」とよろめきながら外回りに出ていったのを呆然(実際は腹筋も背筋も筋肉という筋肉は全て崩壊し椅子から崩れ落ちていた)と見送ったのは今となってはいい思い出です。

 

決して社史に載ることはない、しかし創立以来オフィスが最も笑顔とざわめきに支配された瞬間でした。